ChatGPT Workで変わるAIへの任せ方──人の役割は「細かく指示する」から「入口で見極める」へ

はじめに
AIリサーチ担当のMia Sato(佐藤ミア)です。
前回の記事では、「AIエージェントにうまく仕事を任せるには、人が判断しやすいルールを設計することが大切だ」という話を書きました。ゴールと停止位置を決める、判断基準をそろえる、迷ったら推測せずに止まってもらう。つまり、人がAIのために仕事を進めやすい環境を整える、という考え方です。
ただ、書きながら正直こうも思っていました。
「この設計を、毎回人が一から考えるのは、それなりに大変だな」と。
2026年7月9日にOpenAIが発表した「ChatGPT Work」を触ってみて、その見方が少し変わりました。GPT-5.6を基盤とするChatGPT Workは、アプリやファイルから情報を集め、作業の進め方を考え、ドキュメント、スプレッドシート、スライドなどの成果物まで仕上げることを目指すエージェントです。
私が特に注目したのは、「どう進めるか」という段取りの下案までAI側が提示してくれる点でした。今回は、その計画を人が入口でレビューするという変化を見ていきます。
「答え」ではなく「成果物」まで返す
これまでのChatGPTでも、資料の要約やデータ分析はできました。ただ、「売上データを集計する」「顧客の声を分類する」「前週資料と同じ形式でまとめる」「共有用のスライドにする」といった流れでは、人が工程ごとに指示を出し直す必要がありました。
ChatGPT Workでは、最初に欲しい成果物を伝えると、必要な工程を小さなステップに分け、複数の作業を続けて進めようとします。OpenAIは、ChatGPT Workを、アプリやファイルを横断して目標を完成した成果物に変えるエージェントと説明しています。会話の相手というより、「完成までの進め方を考える担当者」に近い印象です。
計画モードが「任せ方」の下案を作る
私が一番注目したのが、計画モード(Plan mode)です。
ChatGPT Workは、いきなり作業を始めるのではなく、必要な情報を集め、質問をし、「この順番で進めます」という計画を提示します。人はその内容を見て、対象範囲、分析方法、成果物の形にずれがあれば、着手前に修正できます。
ただし、自走するほど、最初の方向がずれたときの手戻りは大きくなります。分析結果をもとに表やスライドまで作ったあとで判断基準の違いに気づけば、後ろの工程もまとめて直さなければなりません。
だからこそ、計画モードは「人の確認をなくす機能」ではなく、「確認する場所を作業の入口に移す機能」と考えたほうがよさそうです。
実際に試してみた:3つの資料から週次レポートを作る
用意したのは、日別売上のExcel、顧客コメントのテキスト、前週の報告書の3つです。いずれも検証用の架空データです。

依頼したのは、売上データと顧客コメントを分析し、前週の報告書を参考に、今週の重要ポイント、課題、次に確認すべきことをまとめた1ページの週次報告書と、3枚の共有用スライドを作る、という作業です。
Prompt:
以下の3つのファイルを確認し、今週のEC週次レポートを作成してください。
入力ファイル:
1. 01_weekly_sales_data.xlsx
2. 02_customer_feedback.txt
3. 03_previous_week_report_template.docx
目的:
売上データと顧客コメントを整理し、前週レポートの構成と文体を参考に、今週の状況を社内で共有できる成果物にしてください。
作成してほしい成果物:
・1ページの週次報告書
・3枚の共有用スライド
1枚目:今週の要点
2枚目:カテゴリ別の変化
3枚目:顧客コメントの傾向と次の確認事項
作業を始める前に、Plan modeで以下を含む実行計画を提示し、私の承認を待ってください。
・各ファイルをどのように使うか
・売上データの比較方法
・顧客コメントの分類方法
・報告書とスライドの構成
基本ルール:
・数字は必ずExcelから再計算する
・顧客コメントは、内容の近いものをテーマ別に分類する
・確認できない情報は推測せず、「不足情報」として記載する
・完成後、報告書とスライドの数字が一致しているか確認する
実際に使用したプロンプト
確認したかったのは、単に要約できるかではありません。形式の異なるファイルを読み、数字と文章を結びつけ、既存資料の形式を参考にしながら、二種類の成果物まで一続きで作れるかどうかです。
最初に3つのファイルと成果物の条件を渡し、作業前に計画モードで実行手順を提示するよう依頼しました。
提示された計画では、Excelの売上を前週と比較し、顧客コメントをテーマ別に分類し、前週資料の構成を確認したうえで、報告書とスライドを作る流れが整理されていました。
ただ、計画を見ると、数字の変化と顧客コメントを、どのような基準で結びつけるのかが少し曖昧でした。
今回のデータでは、トートバッグの売上低下と、送料表示に関するコメントが同じ期間に確認できます。しかし、同時に発生しているからといって、送料表示が売上低下の原因だと断定することはできません。
そこで着手前に、「コメントだけを根拠に原因を断定しないこと」「成果物では、確認できた事実、資料から読み取れる傾向、追加確認が必要な仮説を分けること」を計画に追加してもらいました。
完成後に表現を一つずつ直すのではなく、作業前に判断基準を加える。ここに、AIが段取りを作り、人が入口でレビューする意味があります。

計画を修正したあと、その内容で作業を進めてもらいました。
完成した週次報告書では、前週と今週の売上変化、商品別の特徴、顧客コメントで繰り返し見られたテーマが整理されていました。スライドも、今週の要点、商品別の変化、顧客コメントと次の確認事項という3枚の構成になっていました。

印象的だったのは、Excelの集計、テキストの分類、過去資料の構成確認、報告書の作成、スライドへの整理までが、一つの仕事としてつながっていたことです。途中で「次は表にして」「次はスライドにして」と指示を継ぎ足さなくても、最初に確認した計画に沿って成果物まで進みました。
一方で、完成した資料は、そのまま共有せずに自分でも確認しました。報告書とスライドの数字が一致しているか、顧客コメントの分類に偏りがないか、事実と仮説が混ざっていないかを見直します。
調査、整理、資料化まではAIに任せても、内容の承認や正式な共有といった最後の操作は人が引き取る。この役割分担は、Workになっても残しておきたい部分です。
人の役割は「細かく指示する」から「入口で見極める」へ
今回試して感じたのは、「任せ方の設計」がなくなるのではなく、その作り方が変わり始めたということです。
これまでは、人がゴール、手順、判断基準を一から書き下ろしていました。これからは、AIが出した計画を人が確認し、範囲や基準を修正してから実行させる形が増えていくのだと思います。
人が見るべきなのは、成果物の形が目的に合っているか、資料から言えることと言えないことが分かれているか、不足情報を推測で埋めていないか、そして最後に人が確認する操作が明確か、という点です。
AIが自走するほど、途中で何度も指示する力より、最初にどこへ向かわせるかを見極める力が重要になります。
まとめ
ChatGPT Workを触ってみて、成果物まで作れること以上に印象に残ったのは、AIが「仕事の進め方」まで提案し始めたことでした。
その分、人の役割はなくなるのではなく、少し上流へ移ります。AIが出した計画を確認し、判断基準をそろえ、最後の承認を引き取る。前回が「AIが迷わないためのルールを作る話」だったとすれば、今回は「AIが出した段取りを入口で整える話」だったのだと思います。
新しいツールが出るたびに、すべての機能を追いかけるのは大変です。ただ、自分の中に「任せ方の型」があれば、ツールが変わっても同じ考え方で使い始められます。
まずは、結果を自分で確認できる小さな仕事から。AIの計画を見ながら、自分が普段どの基準で判断しているのかを言葉にすることが、人とAIの安定した協働につながるはずです。
参考文献(出典)
- 参考(公式):ChatGPT Work with GPT-5.6/OpenAI/https://openai.com/chatgpt-work/
- 参考(公式):ChatGPT is now a partner for your most ambitious work/OpenAI/https://openai.com/index/chatgpt-for-your-most-ambitious-work/
- 参考(公式ヘルプ):ChatGPT Work and Codex/OpenAI Help Center/https://help.openai.com/en/articles/20001275-chatgpt-work-and-codex
- 参考:デスクトップ版ChatGPT大幅刷新 AIエージェント「Codex」統合、「ChatGPT Work」に/ITmedia AI+/2026年7月10日/https://www.itmedia.co.jp/aiplus/article/2607/10/2000000178/
- 参考:「ChatGPT Work」発表 CodexアプリはChatGPTアプリに統合/週刊アスキー/2026年7月10日/https://weekly.ascii.jp/elem/000/004/418/4418372/
※本文の一部はAIの支援を受けて作成し、筆者が加筆・修正しています。内容は筆者個人の見解であり、GDX株式会社の公式見解・声明を示すものではありません。情報は参考目的であり、公式発表・一次情報をご確認ください。

