一覧へ戻る

グローバルEC、売上の数字は正しくつながっていますか?─Agentic BI時代のレポート設計

https://gdx-corp-sitekey.g.kuroco-img.app/v=1787901325/files/user/%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%EF%BC%9A%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/gdx-note-banner-2026-08-28T07-14-56.png

はじめに

AIリサーチ担当のMia Sato(佐藤ミア)です。

GDXでグローバルECの支援をしていると、「レポート作成をもっと自動化したい」という相談を受けることがあります。

ただ、実際の現場を見ていると、単にレポート作成に時間がかかっているだけではありません。会議のたびに「この数字も見たい」が増え、販売チャネルが増えるほどデータの取得元や形式も増えていきます。

さらに、作成担当者自身も、それぞれの数字が何の判断に使われるのかを十分に理解しないまま、更新作業だけがルーチン化していたり、担当者ごとのExcel補正や手作業のルールが積み重なったりするケースもあります。

こうした状況を見ている中で、最近発表されている「Agentic BI(Agentic Business Intelligence)」の機能を調べ、私はむしろその一つ前の部分が気になりました。

AIやBIに数字を見てもらう前に、その数字がどこから来て、何のために使われ、最後にどこへつながるのかは整理されているでしょうか。

今回は、Agentic BIの動きをきっかけに、グローバルECをローンチする前に考えておきたい「数字の流れ」について考えてみます。

「レポートが大変だからBIを入れる」で解決する?

BI(Business Intelligence)は、企業にあるデータを集め、売上や在庫などを分析・可視化する仕組みです。

レポート作成が大変になると、「ローデータをまとめてBIに入れれば楽になるのでは?」と考えたくなります。

ただ、ツールを変えるだけでは解決しないことがあります。

たとえば同じ「売上」でも、受注した時点の金額なのか、出荷した時点なのか、返品や値引きを反映した後なのかで意味は変わります。

その状態でレポートだけを自動化すると、曖昧な定義までそのまま自動化されてしまいます。

大事なのは、最初に

誰が、何を判断するために、この数字を見るのか

を整理することだと思います。

ローンチ前に考えたい「数字の流れ」

グローバルECでは、ECサイト上の注文が、そのまま会社の売上や会計数字になるわけではありません。

大きく見ると、

注文 → 出荷 → 売上計上 → 決済 → 入金 → 会計

という流れがあります。

グローバルECにおける数字の流れ
注文から会計まで、数字がどのようにつながるかを整理したイメージ。

この途中には、キャンセル、返品、値引き、送料、税、決済手数料、為替などが入ります。

たとえばEC上で100ドルの注文が入っていても、その後に返品が発生したり、税や決済手数料、為替換算などが加わったりすれば、EC上の受注金額、実際の入金額、会計上で扱う売上や費用の数字がすべて同じになるとは限りません。

どの時点の数字を「売上」と呼ぶのかを決めていなければ、ECレポートと会計データが合わないたびに、人が理由を探すことになります。

そのため、ローンチ前に最低限、以下は整理しておきたいところです。

  • 何を判断するために、どのKPIを見るのか
  • 「売上」「返品」「在庫」などをどう定義するのか
  • どのシステム/データを正とするのか
  • Order IDやSKUなど、データをつなぐキーは何か
  • EC上の数字がどの会計データにつながるのか
  • どのタイミングで数字を照合するのか

ここで重要なのは、最初から完璧なBIを作ることではありません。

最初は手作業でもいい

ローンチ時点では、レポートがExcelでも、作成が手作業でもよいと思います。

ただ、

「手作業で始めること」と、「将来どう自動化するかを決めずに始めること」は違います。

数字の定義や取得元を決めないまま運用を始めると、「このチャネルだけ返品を後から引く」「このデータだけ別の為替を使う」といった補正ルールが担当者ごとに増えていきます。

そして後から自動化しようとしたとき、まず「この数字は何を意味していたのか」を解読するところから始めることになります。

最初から自動化する必要はなくても、数字がどこから来て、どこへつながるのかだけは設計しておく。これが、後からBIやAIにつなげるための土台になると思います。

その上で、Agentic BIが活きる

こうした数字の土台が整理されていると、最近登場しているAgentic BIの価値も見えやすくなります。

Googleが2026年7月に発表した「Looker Agentic Workflows」では、自然な言葉で条件を指定し、指標を継続的に監視したり、変化に影響した要因を分析したりする仕組みが提供されています。

Qlikでも「Discovery Agent」が提供され、過去のデータパターンと比較しながら、異常値や新しいトレンドを見つける方向が強化されています。

こうした機能を見ると、BIは「人がダッシュボードを開いて数字を探すもの」から、「AIが継続的にデータを見て、確認すべき変化を先に知らせるもの」へ広がり始めているように感じます。

ただし、そのためには、AIが見る数字の意味が整理されている必要があります。

何を売上と呼ぶのか。どのデータが正なのか。どの変化を重要と考えるのか。

その土台があれば、

数字の流れを設計する → 定義・取得元を整理する → AIが継続的に監視する → 変化や異常だけを知らせる → 判断やアクションにつなげる

という流れが作りやすくなります。

BIの前に設計したいもの

Agentic BIについて調べていて、改めて感じたのは、AIそのものより、その前の数字設計の重要性でした。

グローバルECでは、販売する国やチャネルが増えるほど、注文から会計までの間に通るシステムやデータも増えていきます。

だからこそ、BIやAgentic BIを導入する前に必要なのは、きれいなダッシュボードを作ることではなく、

意思決定から会計まで、数字がどこから来て、何を意味し、どうつながるのかを設計すること

なのだと思います。

その土台があれば、最初は手作業でも、後からBIやAIにつなげやすくなります。

そしてAgentic BIがさらに進めば、人が数字を集めてレポートを作り続けるのではなく、AIが継続的に監視し、対応が必要な変化だけが業務の中に届く形に近づいていくかもしれません。

AIを入れることより先に、AIが正しく見られる「数字の流れ」を作っておく。

グローバルECのローンチを考えるとき、これからますます重要になる視点ではないかと感じています。

参考文献(出典)

※本文の一部はAIの支援を受けて作成し、筆者が加筆・修正しています。内容は筆者個人の見解であり、GDX株式会社の公式見解・声明を示すものではありません。情報は参考目的であり、最新情報については各社の公式発表・一次情報をご確認ください。

#AI #AgenticBI #BI #データ分析 #グローバルEC #EC #生成AI #DX