Google「Universal Cart」で変わる買い物─ECブランドはどう選ばれ続ける?

こんにちは、GDX株式会社でAIリサーチを担当しているMia Sato(佐藤ミア)です。
最近、Googleが米国で提供を始めた「Universal Cart」の紹介を見ていました。Google検索やGeminiで見つけた、いろいろなショップの商品を一つのカートにまとめられる機能です。
Universal Cart などショッピングをサポートする新たな機能の紹介
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最初は「サイトごとにカートを開かなくて済むなら便利そう」と思いました。私自身、買い物をしているうちにタブが増え、何をどこで見つけたのか分からなくなることがあります。でも、公式の説明を読んでいくうちに、私が気になったのは「カートが一つになること」ではなくなりました。
商品を入れてから、比較する、値下げを待つ、買うか迷う。そんな時間にまでGoogleやAIが関わるようになったら、ECを運営する側の仕事はどう変わるのでしょうか。今回は、そのことを考えてみたいと思います。
カートは、前から「買うためだけの場所」ではなかった
私がネットで服を探すとき、気になる商品をカートに入れても、すぐ決済するとは限りません。別の色と比べたり、ほかのブランドを探したり、送料を見てから考え直したりします。「週末にもう一度見よう」と思って、そのまま忘れることもあります。
こういう使い方は、きっと珍しくありません。カートは購入への入口である一方、気になるものを一時的に置いておく場所でもありました。だからECサイトには「お気に入り」ができ、後日ログインしても商品を見返せたり、カートに残した商品や再入荷を知らせるメールが届いたりするようになったのだと思います。
運営側から見ると、それぞれ別の施策です。お気に入り登録、カゴ落ちメール、値下げ通知、再入荷通知。でも消費者側では、全部「まだ決めていない商品を忘れずに検討する」という一つの行動につながっています。
このことを考えてからUniversal Cartを見ると、印象が変わりました。Googleがまったく新しい買い方を作ったというより、各ショップや消費者自身が分担していた「覚えておく、比べる、待つ」を、Google上でつなぎ直そうとしているように見えたのです。
Googleが手伝うのは、カートに入れたあとの迷い
Universal Cartでは、複数の販売店の商品をまとめて保存できるだけでなく、値下げや再入荷を追い、プロモーションや支払い方法の特典も確認できます。Googleが紹介した例では、自作PCの部品を集めたときに、AIが部品の相性を確認し、問題があれば別の商品を提案します。
私はPCを自作したことはありませんが、服や家電を買うときにも似たような迷いがあります。「このサイズでいいかな」「今買って、来週安くなったら嫌だな」「ほかにもっと合うものがあるかも」。そのたびに検索し直すのは意外と手間です。
Googleは、これまで検索で見つけることを助けてきました。Universal Cartを見ると、見つけた後の判断にも継続して関わろうとしているように感じます。しかも、判断の途中でショップを一つに絞る必要がありません。消費者は、違うブランドの商品を並べたまま考えられます。
ECサイトはこれまで、自社のカートに入れた人へどう働きかけるかを考えてきました。ところが、比較や値下げ待ちの場所がGoogleにも広がると、自社サイトに来ていない間にも、商品が候補に残ったり、逆に外れたりすることになります。
ここで私が気になったのは、カートの便利さ以上に、購入前の「検討する時間」がブランドのサイトの外にも広がっていくことでした。では、その中で自社の商品を選んでもらうために、何ができるのでしょうか。
まず、比較候補として残っていられるか
以前の記事では、AIに商品を正しく理解してもらうために、ECの商品情報をどう整えるかについて書きました。
Universal Cartを見て、あの話の続きを考えるようになりました。AI検索で一度見つけてもらえても、比較の途中で必要な情報が足りなかったら、購入候補として残れるとは限りません。
たとえば私がスニーカーを探していたとして、好みのデザインを見つけても、欲しい色の在庫が分からなかったり、サイズ表記が曖昧だったりしたら、別の商品に目が移ると思います。価格は魅力的でも、届くまでの日数や返品条件が分からなければ、その場で決めるのは難しいです。
商品名や説明文を整えることだけでなく、サイズ、カラー、在庫、価格、配送条件など、比較の途中で必要になる情報を正確に届ける。AIに選ばれるための特別な裏技というより、これまでECで大切にしてきた基本を、外部の購買体験でも通用する形にしていくことなのだと思います。
もちろん、情報を整えれば必ず候補に入るわけではありません。それでも、古い在庫情報や分かりにくい商品説明のせいで検討から外れてしまうのは、できるだけ避けたいところです。
そして、ここでもう一つ考えたいことがあります。候補に残って、いよいよ「買おう」と思ってもらえたとして、その購入はどこで完了するのでしょうか。
「自社ECに戻す」だけでは考えきれない
最初は私も、Googleで比較した人をどう自社ECでの購入につなげるかが重要だと思いました。ところがUniversal Cartでは、対応する販売店の商品ならGoogle PayでGoogle上から購入できる場合があり、別の場合には、商品を引き継いで販売店サイトで決済します。
つまり、買う場所は一つではありません。ここを知ってから、「とにかく自社サイトに戻ってきてもらうこと」を唯一の目標にするのは少し違う、と感じるようになりました。
自社ECに来てもらえる場合には、そこでの体験が大きな意味を持ちます。Googleで商品を決めたのに、サイトではカートが空だったり、もう一度商品を探す必要があったりしたら、私なら面倒に感じます。GoogleのCart APIでは、対応する仕組みを導入した販売店サイトへカートを引き継ぐ方法も説明されています。こうした接続ができるなら、その先の購入画面まで含めてスムーズにしたいところです。
ただ、スムーズさだけでは「そのブランドから買う理由」にはならないかもしれません。価格が比べやすいほど、会員特典、配送の安心感、返品のしやすさ、店舗で相談できることなど、商品以外の価値が気になります。私も同じ値段なら、買った後に困らなそうなショップを選びます。
一方、Google上で決済が終わる場合、自社サイトでそうした魅力を伝える機会は減るかもしれません。でも、Googleの説明では、どちらの購入方法でも販売元は販売店です。ブランドとの関係までGoogleに置き換わるわけではありません。
そう考えると、大切なのは「どの画面で決済してもらうか」だけでなく、「どの経路で買った人にも、このブランドを選んでよかったと思ってもらえるか」なのではないでしょうか。
購入されたあとにも、ブランドの役割は続く
もし私がGoogle上で初めて知ったブランドの商品を、そのまま購入したとします。購入前にブランドサイトを見ていなければ、届くまでそのブランドのことをほとんど知らないかもしれません。だからこそ、注文確認の分かりやすさや、配送時の案内、実際に商品を手にしたときの体験が、そのブランドの印象を作ると思います。
商品について困ったときに相談しやすいか。次に買うときに思い出せるか。会員サービスやアプリ、店舗など、またつながれる場所があるか。こうしたことは、従来のCRMやカスタマーサポートと同じ話に聞こえるかもしれません。でも、購入前の接点が自社ECの外に増えるほど、購入後の接点を丁寧に作る意味も大きくなりそうです。
もちろん、Google経由の注文でどんな顧客情報を利用できるか、どの施策につなげられるかは、連携方法や本人の同意などによります。何でも自由にできるわけではありません。だからこそ、技術的な対応と、購入後の体験づくりを分けずに考える必要があると感じています。
今回調べていて、私は「AIにどう商品を見つけてもらうか」だけを考えていた頃より、少し視野が広がりました。比較の候補に残ること、自社ECに来た人を迷わせないこと、Googleで購入した人にもブランドの価値を届けること。購入までの経路は違っても、どれも一つのブランド体験につながっています。
Universal Cartは2026年10月に米国で提供が始まった機能で、今回は私自身で操作して試すことはできませんでした。日本での展開や実際の利用状況も、これから見ていきたいと思っています。
ただ、今回の発表を見て、EC運営で考えたい問いが一つ増えました。AIに商品を選んでもらったその後、私たちは何を理由に、もう一度選んでもらえるだろうか。 カートの機能そのものより、その先にあるブランドの役割を考えるきっかけになりました。
参考・引用
- Google Japan「Universal Cart などショッピングをサポートする新たな機能の紹介」(2026年5月20日)
https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/google-shopping-cart/ - Google「An intelligent new shopping cart」(2026年10月15日)
https://blog.google/products-and-platforms/products/shopping/universal-cart-launch/ - Google for Developers「Cart API」
https://developers.google.com/merchant/ucp/guides/overview/cart-overview?hl=ja
※本文の一部はAIの支援を受けて作成し、筆者が内容を確認したうえで加筆・修正しています。内容は筆者個人の見解であり、GDX株式会社の公式見解・声明を示すものではありません。

